感情は言語の壁を超える

青空に映えるマッターホルン

貴重な添乗員時代の経験

こんにちは、Megumiです。

子どもと親御さんに役立つ英語教育ブログを発信しています。

私はこれまで英語を使う様々な仕事をしてきました。

どの仕事からもたくさんのことを得ることができましたが、その中でも、旅行会社の添乗員として働いた経験はいろいろな意味で強烈でした(笑)。

今日はそんな添乗員として働いたときに経験した出来事についてお話しします。

これがマウンテンビュー!?

私が働いていた旅行会社は海外旅行専門でした。

当時、私は南ヨーロッパグループに所属していたので、夏の間はほぼスイスのツアーに出ていました。

あれは忘れもしないスイス南部の観光地、ツェルマットのホテルに泊まったときの出来事です。

ツェルマットは有名なマッターホルンの麓にありますので、私が添乗したツアーでも部屋からのマウンテンビューを確約し、部屋からの美しい眺めは、お客さんが最も楽しみにしていることの1つでした。

ホテルに到着しお客さんが部屋に入ると、添乗員は各部屋を回り、不備はないか、備品の使い方は分かるかなどを聞いて回ります。

そして忘れてはいけないのが、確かに部屋からマッターホルンを眺めることができることの確認です。

ツアーパンフレットにおいて、マウンテンビューを確約しているので、もし部屋からマッターホルンが見えなければ、契約違反になってしまうからです。

「マッターホルン、綺麗に見えますね」と確認しながら各部屋を回り、最後に70代のご夫婦が泊まる部屋の前に来たとき、その部屋の向きが他の部屋と違うことに気づきました。

何となく不安を感じながらノックをして部屋に入っていったところ、予感は的中。

その部屋はマッターホルンの方に向いておらず、天窓のような不自然な場所に付いている小さな窓をのぞき込んでようやくマッターホルンが見える程度です。

これでは到底マウンテンビューとは言えません。

なかなか動いてくれないフロントスタッフ

「ホテルに交渉します」と伝えて私はすぐにフロントに向かいました。

フロントに到着した私は、「あの部屋では到底マウンテンビューとは言えない。マッターホルンが見える別の部屋に替えてほしい」と英語で懸命に訴えました。

しかし、7月のハイシーズンです。

フロントの男性は忙しく手を動かしながら、私の話を聞いているのかいないのか、こちらをまともに見ようともせず、他に用意できる部屋はない、と言います。

私は途方に暮れてしまいました。

すると私の隣に先ほどの部屋のご主人が現れ、「あれでマウンテンビューと言えるのか!」と強い口調の日本語で訴えました。

私に対しては温厚に接してくれていただけに、私もびっくりです。

するとどうでしょう。

先ほどまでこちらを見ようともしなかったフロントのスタッフが、なにやら急に慌ただしく動き始めるではありませんか。

そして、「こちらの部屋をお使いください」と言いながら、別の部屋の鍵を私に手渡してきました。

もちろんしっかりとマッターホルンを眺めることのできる部屋です。

こうしてそのご夫婦は無事にマウンテンビューの部屋に泊まることができましたが、私は添乗員として自分の不甲斐なさを反省し、ご主人に謝罪しました。

これをきっかけとしてそのご夫婦とはツアー中にいろいろとお話しできたことは、今でも大切な思い出です。

相手に伝えたいという気持ちの強さ

この一連の出来事をコミュニケーションという側面から今振り返ってみると、ご主人の強い感情から出た日本語が、おそらく教科書的には正しい私の英語よりも、現地のフロントスタッフにダイレクトに伝わりました。

英語を話していても日本語を話していても同じ人間同士、相手に伝えたいという気持ちの強さ(今回は「怒り」ではありましたが…)が、時に言語の正しさを超えるのだと思います。